子どものころ「柳通り」というと、高級料理店や老舗店が並ぶ ちょっと “大人な” 通りというイメージがありました。
祖父が洋食が大好きだったので「香味屋」さんへよく、メンチカツを食べに行きました。
改装する前は、いまのお店とはまったくちがう雰囲気で、フラっと気楽に入れる“近所の洋食屋さん”という佇まいで。
突っかけにTシャツ、なんて格好でよく食べに行きました。
香味屋さんの向かいには本屋さんとケーキ屋さんがあって、帰りに、よく本とケーキを買ってもらいました。
祖父は「福助せんべい」さんで堅焼き煎餅を買って帰ります。
「たぬき」っていうスパゲッティ屋さんもあったんですよね。喫茶店だったのかな。
そこのスパゲッティミートソースは、チーズをかけて焼いてくれました。
今じゃ珍しくもないかもしれないけど、初めて食べた時の感動は大きく、これが大好きで、土曜日に学校から帰ると、ときどき連れて行ってもらいました。
土曜日のお昼といえば、柳通りの入口のところの喫茶店「花の音」。
ここのランチのスパゲッティもよく食べに行きました。
ちょっと生意気に、中学生の時に友達と行ったりもしました。
入学や卒業のお祝いのときは家族でお寿司を食べに「高勢」さんへ。
高勢さんへ行く時は、子どもながらに緊張したことを覚えています。
引き戸を開け、中に入ると、空気がビシッとしているんですよね。
だから私も背筋をビシっと正して、お寿司をいただいていました。
柳通りは、子どもの私にとっても、どこか高貴な香りのする通りでした。
いまはお店の数も減りましたが、柳通りを歩くと、当時のその香りを感じます。
裏路地には花街時代の建造物がところどころ残っていますしね。
こちらのお店は、そんな高貴な下町の雰囲気を感じることができるのではないでしょうか。
「季節料理さつき」です。
「季節料理さつき」は、香味屋を越えて、横断歩道のすぐ脇にあります。
暖簾をくぐると「いらっしゃい!」と、威勢のいい声でマスターが迎えてくれます。
こちらへは、私の父が常連のため、ときどき連れて行ってもらいます。
きっと私がひとりで飲みに行っても、いつものように「いらっしゃい!」と迎えてくださるんだと思いますが…
ここは私にとっては父と行くお店。
青二才がカウンターに座るなんてまだまだ早すぎるだろう、という気持ちもあり、ひとりで行くことができません。
こんなことを書いてしまうと、入りにくお店のように思われてしまいますよね。
決してそんなお店ではなく、敷居の高いお店ではないのです。
気さくなマスターと、美人女将の温かな人柄に包まれた心地の良いお店です。
一度、行くと、きっとまた行きたくなる、通いたくなるお店だと思います。
お料理も、絶品ばかりです。
「季節料理」を掲げているだけあって、ここには旬の魚、野菜を味わうことができます。
とくに魚がおいしいと評判のお店ですが、お肉もおいしいんです。
わさびでいただきます。
この日は寒かったので、メニューにはなかったのですが、熱々の卵とじを作ってくれました。
それと、絶品茶碗蒸し。
こちらで茶碗蒸しをいただいて以来、私は他所で茶碗蒸しを食べることをやめました。
本当です。
こちらは別の日に撮ったもの。
若鮎の天ぷらです。
5月頃になると食べることができます。
マスターには今からリクエストを出しておきます。
こちらは、〆の茶漬けです。
イクラとシャケの親子茶漬け。
新鮮な魚介類や旬の食材を使って、丁寧につくられた料理はどれもとても美しく、美味しいです。
カウンター8席のみのお店は、いつも常連さんで賑わいます。
年齢層は少し高めだと思います。
50、60代のお客さんが多いでしょうか。
だいたいみなさんおひとりでいらっしゃっています。
そしてマスターや女将さんとの会話を肴に、とても楽しそうに飲んでらっしゃいます。
憧れます。
いつか、ああいうふうに、ひとりで行けるようになりたいものです。
なんて言うと、マスターに「そんなこと言ってたら、俺、おじいちゃんになっちゃうよ」と言われそうです(笑)
◆季節料理 さつき◆
いつか一人で飲みに行けるようになりたい。「季節料理 さつき」
