北山珈琲店で店主渾身の一杯をいただく。

お店の扉の張り紙。

「事務、読書、商談、その他打ち合わせなど、珈琲を味わうこと以外でのご入店はおことわります」

「1回のご利用は30分ほどとさせていただいております」

こちらは上野郵便局の少し先にある「北山珈琲店」です。

この張り紙を見て、お店に入るのをやめた方もいると思います。

でも「美味しい珈琲を味わってみたい」と思うのでしたら、勇気を出してドアをあけてみてください。

ドアを開けると、まず、お店の方に「外の張り紙をご覧になりましたか?」と聞かれます。

え?いきなりなに?と思うかもしれません。

「美味しい珈琲を味わってみたい」と思うのでしたら「はい」とひとことお答えしてください。

もし、この感じがイヤだなと思ったら、退店すれば大丈夫です。

「はい、見ました」と答えると、お店の方が、テーブルに案内してくれます。

メニューを眺め、珈琲を決めます。

オーダーをしたら、あとは黙って、静かに「美味しい珈琲が飲みたいなあ」と待つのみです。

店内に充満する珈琲の香り。

豆の入った麻袋。

焙煎機。

テーブルに並ぶ熟成豆。

エイジングした生豆の見本。

珈琲に囲まれて静かに待っていると、この店の主役は珈琲なのだと思えてきます。

とあるメディアで北山珈琲店の店主・北山さんが取材を受けられているのを見ました。

そのなかで、北山さんは「一杯の珈琲にいのちを吹き込むこむには、店主とお客様の双方の力が必要なのです」とお話をされています。

そして続けて

「私が一生懸命がんばれば、おいしい珈琲はできます。でも、それ以上に昇華させることはできない。お客さまが『おれのために最高の仕事をしろ』という念力を送ってくださったら、それが私の念力と合わさって、初めてどーんと凄みのある珈琲ができるのです」

とのこと。

10分ほど待ちましたでしょうか。

ほどなくして珈琲が運ばれてきました。

漆黒。

第一印象は、とにかく黒い。でした。

カップを口に運ぶ。

一口、口にふくむと、思わず「うわぁ」っと言葉がついてでてきました。

深煎りの苦味と熟成豆のまろやかさ。

そしてずっしりとした重量感あるボディ。

なんとも言い難い衝撃。

この衝撃を楽しむべく、ゆっくり、じっくりと、一口ずつカップを口へ運びます。

前半はブラックで。

衝撃を自分なりに受け止められるようになると次に訪れたのは、濃厚なコク酸味の美味しさ。

美味しさというより、コクと酸味の美しさに心が奪われはじめました。

ひたすらこの美しさを楽しみます。

そして、カップに半分くらいになったところで、お店のおすすめの飲み方をしてみます。

砂糖とクリームを加える飲み方。

私は、甘い珈琲が得意ではないので、ここはクリームのみにしました。

アイスピックで砕いた氷で適度に冷やされたクリームを、そっとカップに注ぎます。

かき混ぜずにお飲みください、とのことなので、そのまま、口へ運びます。

「うーーーむ」

これは実に面白いことになりました。

「珈琲はブラックで」なんていうのは、ただの私の思い込みで、単なる先入観で固定観念だったのだと思いました。

でもこれは、北山珈琲の珈琲だから、そう思えたのかもしれません。

後半戦もまた、ひとくちひとくちを楽しみました。

( ´ー`)フゥー...

「ごちそうさまでした」と、思わず、カップに頭を下げてしまいそうになりました。

店主渾身の一杯。

じっくりと、珈琲との会話を楽しんでみてはいかがでしょう。

◆ウエスタン 北山珈琲店◆